司法試験・予備試験の勉強を始めた方から、「過去問はいつからやればいいですか?」と聞かれることがあります。
私の答えは、かなり早い段階から見てよい、むしろ早めに見ておいた方がよい、です。
ここでいう「過去問をやる」は、いきなり時間を計って答案を書くという意味ではありません。知識がほとんどない段階なら、まず問題を見るだけでも十分です。
なおここでの過去問は論文の問題を指します。
1 過去問は「最後に解く問題」ではなく、試験の設計図
過去問を後回しにすると、何を目標に勉強しているのかが見えにくくなります。
司法試験・予備試験で最終的に求められるのは、テキストの内容を覚えることそれ自体ではありません。問題文を読み、条文を使い、必要な法律論を選び、事実を評価して、制限時間内に答案として表現することです。
つまり、インプットの内容や深さも、本来は試験問題から逆算して決めるべきです。
過去問を見ると、「問題文はこのくらい長いのか」「一つの設問で複数の論点がつながって出るのか」「条文を知っているだけでは足りず、事実の評価まで必要なのか」といったことが分かります。このイメージを持ってから講義や基本書に戻ると、同じ説明を読んでも見え方がかなり変わります。
2 初学者は、解けなくて当然です
「今やっても解けないから、過去問がもったいない」という話もよく聞きます。
しかし、初学者が過去問を見て解けないのは当然です。大事なのは、解けるかどうかではなく、最終的に何ができるようにならないといけないのかを知ることです。
最初の段階では、例えば次の程度で十分です。
- 問題文を一度読んでみる
- 知っている単語・条文・論点に印を付ける
- 何を聞かれているのかだけ確認する
- 答案例を見て、「こういう形で答えるのか」と眺める
この段階で正解を出す必要はありません。むしろ、「今の自分には何が足りないのか」を把握できれば十分です。
3 基礎講義が進んだら、「問題→教材に戻る」を始める
基礎講義を一通り聞いた科目については、少しずつ問題検討に進みます。
その際に重要なのは、過去問だけで勉強を完結させないことです。
問題を見て、論点が分からなかった。条文を探せなかった。規範は出たけれど、あてはめができなかった。そういう弱点が見つかったら、基本書・テキスト・講義・判例に戻ります。
私は、この往復が非常に重要だと考えています。
過去問は「実力を測るテスト」であると同時に、「何をインプットし直すべきかを教えてくれる教材」でもあります。
4 「論文講座を終えてから過去問」は遅くなりやすい
入門講義、論文講義、問題集、その後に過去問、という順番で進めると、過去問に触れる時期がかなり遅くなることがあります。
もちろん、体系的な講義を受けること自体は大切です。ただ、講義を全部終えるまで本試験問題を見ない必要はありません。
むしろ、途中で過去問を見ることで、「この講義で説明していることは、試験ではこう使うのか」と接続できます。インプットとアウトプットを完全に分離するより、少しずつ往復した方が、知識の使い方まで含めて身につきやすいと思います。
5 過去問の使い方は、学習段階で変える
過去問は、同じ問題でも学習段階によって使い方を変えてよいです。
初学者:問題を見る。何をする試験なのか知る。
基礎講義受講中:学んだ範囲の問題を読み、条文・論点・答案の流れを確認する。
論文学習期:答案構成をする。時間を計って一部または全部を書く。
直前期:本番と同じ時間感覚で解く。答案の完成度よりも、時間配分・論点選択・メリハリまで含めて確認する。
このように考えると、「一度見たらもう使えない」ということはありません。同じ過去問を、違う目的で何度も使えばよいのです。
6 CBTになっても、過去問を早く見る意味は変わらない
試験がCBT化され、答案作成の方法は変わりました。ただ、問題文から何を読み取り、条文と法律論を使って答案を組み立てるかという本質は変わりません。
操作に慣れる練習は別途必要ですが、過去問を通じて試験の要求水準を知り、そこから日々の勉強を逆算するという考え方は、むしろ今後も重要だと思います。
7 過去問は「できるようになってから」ではなく、「できるようになるため」に使う
過去問を解ける実力がついてから過去問を始める、という順番で考えると、どうしても着手が遅くなります。
過去問は、実力が完成してから挑戦する最終テストではありません。何ができないのかを知り、何を勉強し直すのか決めるために使うものでもあります。
まだ過去問をほとんど見ていない方は、とりあえず直近年度の問題を開いてみてください。全部解く必要はありません。まずは、ゴールを見るところからで十分です。
過去問をどの年度から、どのくらいの深さで進めるべきかは、現在の学習状況によってかなり変わります。すでに何年か分取り組んでいる方は、単純に問題数を増やすより、一度「何ができていて、何ができていないか」を棚卸ししてから次の年度に進むのがおすすめです。

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