2026年10月更新(note版の更新内容に加え、裁判所が現在公開している教材も確認してWordPress版を整理し直しました。)
第1 はじめに
本記事は、実務基礎民事のおすすめ教材を2026年版として整理し直したものです。note版での更新内容に加え、現在の指導での使い方、司法研修所・裁判所が公開している教材、書籍の改訂状況を踏まえて見直しました。
民事実務基礎は、要件事実・事実認定・民事執行保全・法曹倫理と分野が広いですが、全部を同じ深さで勉強する必要はありません。まずは予備試験で何を聞かれるのかを押さえ、そのうえで必要な教材だけ使うのがおすすめです。
2026年10月時点で先に結論
- まず全体像を一冊でつかみたい:大島眞一『完全講義 民事裁判実務[基礎編]』。
- 要件事実をしっかり理解したい:大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎〔要件事実編〕』。
- 過去問演習:『完全講義 法律実務基礎科目[民事]―司法試験予備試験過去問 解説・参考答案―〔第3版〕』を最優先候補に。
- 無料教材を先に使う:裁判所の民事裁判教官室では、要件事実・事実認定・争点整理に関する教材がかなり充実しています。いきなり本を買う前に確認してよいです。
- 執行・保全と法曹倫理はやりすぎない:予備試験で必要な範囲を過去問から逆算して押さえるのが効率的です。
第2 民事実務の書籍の外観
要件事実については、司法研修所系の教材からロースクール向けの本まで選択肢が多く、予備試験にも直結しやすいです。一方、事実認定や執行・保全は、予備試験で問われる範囲自体はかなり基礎的なので、試験対策だけを考えると教材を増やしすぎない方がよいと思います。法曹倫理も、まずは弁護士職務基本規程そのものと公式解説を押さえるのが先です。
特に2026年時点では、裁判所の「民事裁判教官室コーナー」がかなり充実しています。「要件事実(基本編・応用編)(令和7年3月版)」「改訂 新問題研究 要件事実」「4訂 紛争類型別の要件事実」「3訂 事例で考える民事事実認定」「規範的要件について」「対話で進める争点整理」などが公開されています。無料で読めるので、まずここを確認してから市販本を買うのがおすすめです。
民事裁判教官室コーナー(最高裁判所)
第3 書籍紹介
1 基本書・教科書
⑴ 要件事実
①『改訂 新問題研究 要件事実』法曹会 司法研修所 ★★★
要件事実といえばこれ!という本。150ページ以下で、文字も大きく文量は少ないですが、要件事実の基本的な考えを理解するにはこれを読むべし。
弱点というか難点は、事例が簡易的過ぎて要件事実と主要事実の区別がよくわからない感じがする…くらい?あと類型が少ない。
②『4訂 紛争類型別要件事実ー民事訴訟における攻撃防御の構造』法曹会 司法研修所 ★★★
73期くらいから?研修所でも復活して使用されている要件事実の定番書籍。以前の版から、とにかく使いにくい!と定評があったが、それは変わらず…
この本は、要件事実の授業を聞いた後に見返す、まとめノート的な趣旨が非常につよく、これだけで要件事実とは?という行間を読むのはかなりしんどいと思う。
もっとも、ブロックダイアグラムは非常に良くまとまっており、それをみて要件事実の整理理由や具体的な記載例が浮かぶかを確認すると非常に良い。
③『完全講義 民事裁判実務の基礎〔要件事実編〕』民事法研究会 大島眞一著 ★★★
要件事実をしっかり理解したい方には、まずこれを勧めたいです。司法研修所の教材は結論がコンパクトな反面、なぜそう整理するのかが読み取りにくいことがありますが、本書は理由まで丁寧に説明されています。民法・民事訴訟法・要件事実のつながりも見えやすく、この一冊を軸に学習するとかなり整理しやすいです。さらに事実認定等を扱う実践編、予備試験過去問の解説書まで大島先生のシリーズでそろえれば、民事実務基礎の主要部分はかなりカバーできます。
2024年5月に上巻から要件事実編に名称変更の上改訂があった。
④『10訂民事判決起案の手引き(補訂版)』法曹会 司法研修所 ★★★
判決起案のための手引書。形式的な書き方や注意事項などは研修所で使用する(判決をフル起案しない限りそこまで参照はしない?かも)ものである。
要件事実の書籍、という感じには読めないタイトルではあるが、この本の後半は、事実適示記載例集になっており、実際に要件事実を摘示するときにどのくらい書くのか?が例示されており非常によい。この水準くらいが書ければ予備試験的にも問題ないと思う。
※抽象的な要件事実は暗記でも対応できるが、実際に事実を摘示する(訴状や準備書面で書くように事実を示す)時のやり方は慣れるしかないと思う。その点ではまとまっている本書は非常に良いと思う。試験的にもロー入学時からずっと使っていた。
⑵ 事実認定
①『3訂 事例で考える民事事実認定』司法研修所 ★★★
裁判所「民事裁判教官室コーナー」
たしか自分が法科大学院の11月ごろに発表された、研修所の事実認定起案の手引書。これに従って司法修習の起案(実際の事件記録に基づいて事実認定をさせるもの問題研究起案とか集合起案とかいう)することになる。予備試験の段階で求められるレベルとしてはこのレベルまでは必要ないかもしれないが、要件事実の意味、事実認定の類型や考え方の基本がわかるので非常によい。これは読むべし。
②『ステップアップ民事事実認定〔第3版〕』有斐閣 村上八尾ほか著 ★
民事事実認定も実務家向けの本は非常に多くあるし、非常に面白いものが多い。
しかし、予備試験的にも使える概説書的なものは多くない。そうした中で本書は基本的な言葉が十分にまとまっているのでよい。単純に読み物としても面白い。
③『完全講義 民事裁判実務の基礎[実践編]―事実認定・演習問題(要件事実・事実認定)―』民事法研究会 大島眞一著 ★★
要件事実編or基礎編の続きの巻。ここまでやれば民事実務はもうOKという感じ。内容は発展的な要件事実と事実認定の基礎+演習。
この本の神髄は、修習の時に行うサマリー起案(判決書の重要な一部を検討するもの)を書くときの参考例がついている点。
⑶ 民事裁判手続き・民事執行法・民事保全法等
①『第4版補訂版 民事訴訟第一審手続の解説ー事件記録に基づいてー』法曹会 司法研修所 ★
実際の案件に即して手続きを解説する本。研修所の導入などでも使用するので全体の手続きを知るのには最適と思う。
民事訴訟法では民事裁判の通常の手続きの外観をしっかり説明する場面はないので、逆にこうした教材を利用することが民事訴訟法の理解にもつながる。
※民事訴訟法ではいわゆる論点が生じる点についての解説が中心であり、論点が生じない通常の処理がないがしろになっている。通常の手続き上の処理を理解したうえで、異常事態にどう対処するか?という視点があると理解が捗る。
②『基礎からわかる民事執行法・民事保全法(第3版)』商事法務 和田吉弘著 ★
執行保全に関してはそこまで大きな論点がでないので、実際この本でもオーバースペックな気もするが、それでもよく使われているので紹介。個人的には薄いせいで逆に情報量が少なくわかりにくいという印象。かといってこれ以上詳細な書籍を頼るのは予備試験的にはあきらかにオーバースペックなのでむずかしい…
※個人的には実務家向けのこの本がすごいおすすめ。冒頭10ページくらいでも読んでみるとなんじゃ?って感じで読み進めると思う。
2 体系書(より詳細に調べるための本)
①『要件事実マニュアル1(第7版)』『要件事実マニュアル2(第7版)』ぎょうせい 岡口基一著 ★
岡口先生といえばこれ。司法試験的にも民法のあたりはサブノート的に使えそうと思ったが、いやそこまでしなくとも…とも思う。実務的にもとりあえず見てより詳細に文献を探す際の指針にするのでまぁ使ってもいいかなと思う。。けど、予備試験や司法試験を考えれば不要。ここまではやる必要はない。もし、アクセスできる環境にあれば利用してほしいくらいなイメージ。
②『要件事実の考え方と実務(第4版)』民事法研究会 加藤新太郎著 ★
一時、加藤新太郎先生の本をなんとなく読んでいた時に読んだ本。局所局所いいと思う部分やわかりやすい箇所はあったがすごい!という感じはあんまりしなかった(事実認定の方と一緒に読んだ感じ)。司法書士の簡易裁判所の代理権付与の認定の際に使われていた資料を基にしたらしい?
3 演習書
①『要件事実論30講(第4版)』弘文堂 村田・山野目編 ★
要件事実の体系書的な本。一応問題集的な扱いなのでこちらで紹介しているが、ほぼ体系書。著者も基本的には研修所関係者であるから、実質的には研修所本の延長という感じ。実際に研修所の講義でも参照されるのでガチ任官志望の人とかは持っていてもいいと思う。
②『要件事実問題集(第5版)』商事法務 岡口基一著 ★
かなり難易度高めなので司法試験や予備試験では不要。一応問題集として有名なので紹介しているが、買ってまでやる必要はない。自分も修習前の暇なときに使用したくらい。
③『完全講義 法律実務基礎科目[民事]〔第3版〕―司法試験予備試験過去問 解説・参考答案―』民事法研究会 大島眞一著 ★★★
かなり強力な過去問解説書です。民事実務の基本書を書いている大島先生が、予備試験の過去問を解説し、参考答案まで示しています。要件事実だけでなく事実認定問題についても、どの程度の分析が求められるのかを具体的に確認できます。民事実務基礎の過去問演習をするなら、優先度はかなり高い一冊です。
4 判例集
※試験的には間違いなく不要。むしろ民法と民事訴訟法の判例をしっかりやるべし。
5 そのほか
①『完全講義 民事裁判実務[基礎編]─要件事実・事実認定・民事保全・執行─ (完全講義シリーズ)』民事法研究会 大島眞一著
大島先生が予備試験向けにまとめてくれたテキスト。過去問編とあわせてこちらでもOK。執行保全なども書いてあるのでこれ一冊でも対応可能。上巻とどちらがよいかは好み次第かなぁと。口述対策では続編を買う必要はありそう。
②『司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック1 民事実務基礎〔第6版〕』辰已法律研究所
予備試験の民事実務基礎について、必要な知識と過去問の解説・答案例を一冊にまとめて確認したい場合の候補です。2026年時点では第6版が現行なので、これから購入する場合は第6版を前提にしてください。大島先生の本で理解を深める使い方とは少し違い、試験範囲を一冊で確認したい方に向いています。
③『要件事実入門初級編(第3版)』『要件事実入門紛争類型別(第4版)』『要件事実入門 司法試験予備試験出題形式編』創耕社 岡口基一著
要件事実マニュアルの岡口判事の初級向けの本。初級編に予備試験実務基礎科目の解説、紛争類型別編に司法試験民法の要件事実的な解説が入っており参考になる。要件事実的に試験問題を見るとどうなるのか?という点で参考になるが、そこまで買う必要はないと思う。紛争類型別編は紛争類型別と対応して使用するのもありかなと思うが…
④『ゼロからマスターする要件事実 ――基礎から学び実践を理解する』ぎょうせい 岡口基一著
③と同じ感じだが、より深い説明があり、要件事実とは?という視点からの説明がある。要件事実の研究的な部分を見れる一冊。
⑤『解説「弁護士職務基本規程」第3版』
法曹倫理は以下の本がおすすめ
日本弁護士連合会:解説「弁護士職務基本規程」第3版解説「弁護士職務基本規程」第3版www.nichibenren.or.jp
おそらく市販の本屋さんでは販売されていないはず。弁護士会館や裁判所等では買えるかもしれないが、基本的には郵送で購入するか、メルカリで買ってもよいと思う。法科大学院の授業で買う時もあるかもしれない。なお、弁護士登録するともらえる。
弁護士職務基本規程は弁護士会が制定しているので、制定者の解説ということでまぁこれを理解していれば解答筋として間違えることはないと思う。
試験的には規程そのものを探せるレベルで見ておけば大体OKとも思うが、解説が欲しいと思う方はこの本がおすすめ。まぁ仕事になってからも怖くなったら使うしね。
第4 さいごに
以上です。2026年時点では、まず裁判所が無料公開している教材を確認し、そのうえで説明を補う本として大島先生のシリーズを使う、という順番が一番おすすめです。実務基礎民事は教材を増やし始めるとかなり広がりますが、予備試験対策としては要件事実・基本的な事実認定・過去問を中心に据えれば十分です。執行保全や法曹倫理は、過去問で問われた範囲を軸に必要なところだけ補っていきましょう。

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