書評:『実戦演習民事訴訟法ー予備試験問題を素材にして』弘文堂:小林学著

今日はこの前発売された『実戦演習民事訴訟法ー予備試験問題を素材にして』弘文堂:小林学著の簡易書評です。

1 よいと思った点

・実戦演習シリーズの最新
⇒他にも行政法、刑法、民法がある。

・学者の先生による予備試験の解説本
⇒予備校本よりも安定感のある解説。

・参考答案がある
⇒学者本には珍しい(このシリーズの特徴)。

・解説の図表が最高によい
⇒これが一押し。問題ベースで具体的な事例に即して、民事訴訟法の抽象的な概念や判例をしっかり理解できる。特に既判力や一部請求は予備試験での出題が多い分野なので結構な量の解説がされており非常によい。

・学説の対立点がわかりやすい
⇒債権者代位訴訟関係や訴訟承継のあたりの判例がよくわからない部分(債権者代位は改正の影響で…という話)について学説をベースに事案をどう処理するか?がわかりやすく書いてある。この立場だと、こうなるみたいな感じがわかり、学説の理解というよりも論点の理解が進む

・発展編の発展問題の選定が秀逸!
⇒類題として、司法試験や旧司法試験の問題があり演習量が確保できる。単に掲載するのではなく解説も入っておりこれ単独でも理解可能。何よりも問題のチョイスが秀逸。旧司法試験や司法試験の問題を予備試験対策でやる意味がよくわかる。

2 気になる点

・令和5年発表だが、令和2年の問題までしか解説がない
⇒著者が試験委員となった関係での措置で、民法にも同様の年がある。このレベル解説を令和3年、4年の問題でも読みたいともったのでそこが残念。

・答案例が長い
⇒実戦演習シリーズの答案なのでそれそのものが直ちに使えるというものではない。しかし、書籍内にも説明があるが、参考答案例をそのまま覚える学習は意味がない。あくまでも「参考」答案であるから、ここは短所とはいえないかも…(一応指摘)

・網羅性が弱い
⇒冒頭の論点マップみたいなものでよくわかるが、すべての論点について説明があるわけではない。過去問をベースにしているので当然ではある。もっとも、予備試験の頻出論点は当然カバーできる上に、発展問題でもある程度カバーできると思う。

3 総評

 久々に一挙に読めた書籍。精読までしているとは言えないが、予備試験の問題を解いていればすぐに読めてしまう(私が教えまくるので把握しているから読めているだけ…)。

 古い本でいえば、『解析 民事訴訟 第2版』東京大学出版会:藤田広美著のコンセプトに近いと思う(これの現代版という感じ)でよかった。

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 最近はこういう問題演習書が非常に多くてとても勉強しやすい環境にあるなぁと改めて思った。

 予備試験論文前にざっと読むのはありだと思うのでぜひ購入を検討すべき!

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