第1 はじめに
私が受験時代に使用していた本や読んだ本,現在指導に際して確認するために使用している本をまとめていこうと思います。利用方法なども一言二言で書いていきますので参考にしてください。また,同じ名称の本も多いので,通称なども使用していきます。
なお,すべてを私が購入し通読していたわけではなく,図書館で参照していたものも結構記載しております。
特にこれはというものは別途書評にします。
なお,引用しているものは最新版をに統一している予定です。当時使用していた版とは異なります。
また,分類に関しては以下の定義・基準で割り振っております。
第2 行政法の書籍の外観
行政法は演習書が非常に多い印象です。基本書も定評のある者が多いですが、それよりも試験に使えて行政法の理解につながる本が多いです。行政法は最後の科目的な部分がいまだにあり、苦手意識を持っている人が多いですが、基本書や演習書を見ることで解消できるのでは?と思っています。
第3 書籍紹介
(1) 基本書・教科書
①『行政法(第6版)』有斐閣 櫻井敬子・橋本博之著 通称サクハシ
行政法の教科書と言ったらこれ!と思う定番の一冊。知識の整理,用語の定義,判例の整理などすべてコンパクトにしっかりまとまっており、行政法の基礎基本が学べる一冊。定期的に改定されているし,判例ノートとのリンクもしっかりしており,司法試験・予備試験の受験に必要十分な知識を学習できる思う。あとは過去問の分析と演習書で十分といえる1冊。そして、演習書と予備試験の解説は技法でOKという感じです。
②『基本行政法(第3版)』日本評論社 中原茂樹著
最近メジャーな1冊。私の受験のころに初版を読みましたが,事例問題集と教科書の間という印象で使いにくかったため,私はお勧めしていない。判例を簡単にして事例にしており,判例の簡単な理解にはよいのかもしれないが,ある程度の判例を深く理解するほうが試験的にはよいと考えるので。。まぁみんな使っているからこれ!という選択肢は間違えではないのでよいと思う。
③『行政法(第2版)』有斐閣 宇賀克也著
宇賀レインボー。最高裁判事の宇賀先生の1冊本。体系書で紹介する概説シリーズをまとめた感じ。宇賀シリーズが読みやすいなら、基本書ならこっちでもいいかなぁ?とも思う。個人的にはサクハシで十分と思い受験時代には使わなかった。指導するに際して読んだが,あまり違いがないと思う。個人の好き嫌いで選択肢のひとつかなという一冊。
(2) 体系書
①『行政法1ー行政法総論(第六版)』『行政法2ー行政救済法(第六版)』『行政法3-行政組織法(第5版)』有斐閣 塩野宏著
行政法の大家の体系書。これに書いてなかったらもう試験的にはよいのでは…?レベルの本。少なくとも試験的にはこれ以上に調べたりする必要はない。本書まで調査する必要は少ないが,もし行政法で調べものをするならまずはこれかな?という感じ。あまり分量も多くない(主観的に…)ので通読もできそうだが,判例自体の引用の少なさ,縦書きという点でやや読みにくいか。個人的には受験時代から定期的に調べているし,今も常に買い替えている1冊(3冊?)。
なお、組織法は買って読むことはないと思う(重要ではあるが…)。
②『行政法概説Ⅰー行政法総論(第7版)』『行政法概説Ⅱー行政救済法(第7版)』『行政法概説Ⅲー行政組織法/公務員法/公物法(第5版)』有斐閣 宇賀克也著
最新・信頼の体系書(ってたしか帯に書いてあったような…)。最高裁判事の宇賀先生のシリーズ。どうでもいいですが,最高裁判事の仕事しながら本を更新できるって常人ではないですよね。内容の質・量ともに申し分ないですし,塩野が肌に合わないならこちらでもOKかと思います。最近ではむしろこちらが受験生のメインですかね。
(3) 演習書
①『事例研究行政法(第4版)』日本評論社
事例問題であればこれという1冊。ロースクールでの授業経験をベースに問題を作成し,解説やコラムで学生が陥りやすい間違いなどが書かれている。第1部の問題だけ解ければ基本的に司法試験対策としては十分なレベルと思う。第2部も秀逸。前版までは第3部があったがオーバースペック気味だったのでほとんど使用していなかったが,第4版からこれがなくなり代わりに論点表がついたり,3部を廃止して1部2部が拡充されており非常に使いやすくなっている。伝統的な行政法の演習書として原則全員に読んでもらいたい。できれば1部だけでも。試験委員の先生方の問題意識もここのコラムに書いてあるといえ,試験対策には必須の一冊。
②『基礎演習行政法(第2版)』日本評論社 土田伸也著
中央大学法科大学院の行政法の期末試験を集めた問題集の様で,中大ロー生はみんなもっている印象です。内容は事例研究よりもやや低めのレベルではあるが,オーソドックスな問題を網羅的に体系的にまとめてあり,基本的な論点をつぶしながら答案作成の方法が学べる1冊。個人的には,初学者向けという印象が強いです。
③『実践演習 行政法ー予備試験問題を素材にして(第2版)』弘文堂 土田伸也著
上記の土田先生による予備試験問題の解説書。この実践演習はシリーズで全9法出る予定だったのですが現在刑法と民法まで。行政法は基礎演習とテイスト的には同じですが,予備試験の問題であること,参考答案がついている点が違い。網羅性には欠けるが過去問分析のツールとしては役に立つと思う。過去問解析系の本がないという人は,学者の予備試験解説はおそらくほかにないので買ってみてもよいと思う。なお,答案例はやや長めだがあれを8割くらいかければ余裕で合格という水準を超えるくらいだろう。
※2023年3月時点で⑧の『行政法解釈の技法』がでたのでこの本を買うよりそちらをおすすめします。
④『行政法 事案解析の作法(第2版)』日本評論社 大貫・土田著
中央大学の教員2名による演習書。私の受験開始時には事例研究とこれくらいしか,行政法の演習書はなかったので当然につぶしていた。まぁロー入試で行政法を使ったの国公立だけだし,予備試験レベルという点で言えばやや微妙。判例をママ使用している感じの問題も多く,その判例も割と有名なので新しい発見という観点では特になかった印象。今となっては,他の書籍や過去問も多いので試験対策として読む価値は薄れているだろう。中央ローではこれを教材にしているという話なのロー生向け教科書といった立ち位置か。
⑤『事例から行政法を考える』有斐閣 北村他著
一時期,司法試験のネタ本といわれたので買って読んだ1冊。この法学教室の連載系の本はどれもよい本ですのでお勧めです。しかし,ネタ本といえるほど司法試験と親和性が強いとも思えず。たまたま墓地埋葬法の問題点が一緒だっただけ(それでも出題時に同じ問題同じ個別法を知っていたらずいぶん楽なのは目に見えているが)というのがおちだと思う。事例研究などもやり切ったよという行政法強者がやってもいいかなという一冊です。
⑥『行政法解釈の基礎: 「仕組み」から解く』有斐閣 橋本博之著
この本がなければ仕組み解釈の理解はできなかったと思う一冊。自分が読んだときはまだ仕組み解釈という言葉が独り歩きしてどういうものか?実態のつかめない状況だったのですが,この本でずいぶんとよくわかるようになります。また,過去問をベースに解説しており過去問解説としても使用できる優れもの。少し古いので今から買うべきかは迷うが,今でも通用する一冊だと思う。一度廃棄してしまったが再度購入したので,いまだに手元にある。
⑦『行政法ガール』『行政法ガールⅡ』法律文化社 大島義則著
憲法ガールと同様に過去問をベースにした小説形式の解説書。基本的な問題文の読み解きに始まり,判例をどのように使うのか,処分性や原告適格,裁量論といった主要テーマの解説などを含んだ過去問解析の王道の本といえる。ちなみに著者の大島先生は必修の行政法を慶応ローで持っているということで,うらやましいなぁと思う(笑。憲法ガールと同様に個別指導の際には購入するように指示する本です。
⑧『行政法解釈の技法』弘文堂 橋森博之・大島義則・伊藤建著
良書。事案分析の作法、論点解説、予備試験問題の解説と解答例とすべてがそろった一冊。教科書と入門講義聞いてこれを読めば行政法はOKレベルの本
(4) 判例集
①『行政 判例百選Ⅰ(第8版)』『行政 判例百選Ⅱ(第8版)』有斐閣 宇賀他編
一応,定番書籍ということで判例百選を上げます。しかし,これは掲載判例が多すぎる,一個一個の判例の事案や判旨の引用が少ないし解説も内容が薄いため,試験対策向けとしては不適切だと思います。択一用でざっと見るという書籍というところか。というか百選なのに四捨五入すると300近いのはなんででしょうか。。。百選もっとしっかりしてくれと思う書籍です。
②『ケースブック行政法(第7版)』弘文堂 稲葉他編
行政法の判例をしっかりと読みたいなら,試験的にはこの本しかないと思う。ある程度の長文で判例が引用されていて,かつ掲載されている数および量もそこそこある。また,行政法の判例を読み解くに際しては個別法の条文を読む必要があるが,この本はそのあたりも手当てがされており非常に良い一冊。ただし分厚いので全部を通読はできないと思う。
③『行政判例ノート(第5版)』弘文堂 橋本博之著
サクハシ向けの判例集。コンパクトでよいし近時の改定で直近の最新判例も掲載された上に体裁なども変わって読みやすくより使いやすくなった一冊。サクハシと合わせて使えば行政法の知識不足は生じないレベルといえる。ただし,引用されている判決文がやや短いものもあるのでそこが難点か
(5) そのほか
①『行政法Ⅰ 現代行政過程論 第4版』『行政法IⅡ 現代行政救済論 第3版』有斐閣 大橋洋一著
基本書としても使えると思うが,どちらかというと論点の理解のために読むという感じの本。判例の理解も深く書かれており教科書と判例集の良いとこどりをしており非常によい本。そのため中途半端かな?とも思えるが,人によってはこれで十分に答案を作成できる量の知識とノウハウを得られると思う。
②『実務解説 行政訴訟』勁草書房 大島義則編著
行政事件訴訟法を改正時の立法資料から解説している一冊。取消訴訟の部分だけでも司法試験・予備試験対策として非常に有効な記載が多く,そういう仕組みでこういう判例があるのかなど理解が深まる書籍。また,近時の司法試験・予備試験は取消訴訟以外の訴訟類型とその訴訟要件や関連論点への言及を求める傾向にあり,そのような点もこの本があれば対応できると思う。択一対策として,行政事件訴訟法のコンメンタールを読む感じでややオーバースペックだし,参考書としてはやや高額だが,行政法で高得点を狙うならぜひ読んでほしい一冊。
③『新人弁護士カエデ、行政法に挑む』学陽書房 大島義則著
行政事件をベースにしたお仕事本…と思いきや事例問題の取り組み方もわかる良書。試験勉強でも使えます。
個人的には、司法試験の受験後とか予備試験論文後とかのタイミングで読むといいと思う。実務基礎のイメージもつかめるのでよいかなと。
第4 さいごに
以上です!行政法はもっといろいろあるので随時加筆していきます!
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