会社法の場合、民事訴訟にはなるものの要件事実を意識して整理することはあまり少ないですが、司法試験・予備試験の出題は基本的には訴訟の場面です。そうすると、要件や問題点の漏れがないように、という観点から要件事実的な整理をしておくと、論点落としが減ります。特に、本案の問題で株主総会取消事由等は、問題文の中で事実を見落とす人が多い印象が添削をしていて多いです。
本書は、要件事実的な整理として各訴訟類型ごとの請求原因は何か?どういう条文の整理でそうした請求原因になるのか?が概説されています。また、基本的に帯に記載のあるように司法試験・予備試験で出題のある分野を中心にまとめられておりすぐに使えるという感じです。要件事実の整理のため、論点の詳細な解説ではなく、条文と判例の理解からスマートにまとまっている点も、読みやすく好印象です。また、図表もかなり秀逸です(個人的には103Pの任務懈怠のまとめは感激した)。
さらに、会社法の条文がそのまま引用されてどこを読むとどういう要件事実が出てくるのか?みたいなものがわかりやすいなっている点も非常に良かったです(仕事しているときにこういう視点でほかの法令を読むという意識にもなり、要件事実の整理・法律要件分類説の理解にもなる)。
すでに過去問を解いているという方でも改めてこの本で視点を得てから問題文を読み直すと発見がありそうです。
注意点としては、論点の解説をしているわけではないのでいきなりこれを読んでもわからないと思います。また、要件事実的な整理は会社法では必須ではなく(民法・民訴のように要件事実の理解がないと困難な場合があるわkではない)オーバースペック気味です。あと、実務書よりなので、ページ数の割には高いかな…整理がしっかりしているのでよいのですが、+αという感じの本です。
※過去門そのものの解説はないです!
正直な話で言えば、受験レベルであれば、アガルートさんの論証集の後ろに乗っている紛争類型チェックシートみたいなものでいいと思います。(アガルートの論証集は論証よりもこういうサブ的なものが非常に良いです。昔の受験新報の連載をモチーフにしているのでよき。刑法の構成要件定義集とか。)
ですので、購入の可否は、書店で立ち読みして良さを感じてから買うといいかなと思っています。この時にアガルートの論証集とも比較してみてください。
なお、この手の本では『紛争類型別会社訴訟Ⅰ・Ⅱ(第3版)』がありました。こちらは平成23年と古く、私の書評でも紹介を避けていました。本書を見た時にこれの代替になりそうだなぁと思ったら、はしがきにも似たようなことが書いてありました汗
さらに余談ですが、現在判例タイムズにて、「新・紛争類型別会社訴訟」という連載が始まっています。1回あたり4~5ページ程度ですので、図書館等で読める人は読んでみるのもありかもしれません。私はこの連載だけほしいなぁと思っていたら、判例タイムズのDBがあることを知りました…
受験的にはオーバースペックですが、仕事でも使えそうなので(判例検索ってホント大事なので)一応紹介です。
以上です!もし興味があり必要性を感じたら、リンク先で買ってみてください。
ちなみにアガルートの論証はこちら!(アガルートの論証は非常におすすめです!)
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