第1 はじめに
私が受験時代に使用していた本や読んだ本,現在指導に際して確認するために使用している本をまとめていこうと思います。利用方法なども一言二言で書いていきますので参考にしてください。また,同じ名称の本も多いので,通称なども使用していきます。なお,すべてを私が購入し通読していたわけではなく,図書館で参照していたものも結構記載しております。
特にこれはというものは別途書評にします。なお,引用しているものは最新版をに統一している予定です。当時使用していた版とは異なります。
第2 民事実務の書籍の外観
要件事実については、司法研修所の本からロースクール向けまで幅広くあり、試験にマッチしたものがあります。しかし、事実認定や執行保全は、現状試験で出題される内容が基礎的過ぎることから、試験に効率的な書籍が少ない印象です。そのため、試験後も使用できる感じのものを利用することをお勧めします。法曹倫理はもう、公式解説集があるのでそれしかないです!
第3 書籍紹介
1 基本書・教科書
⑴ 要件事実
①『改訂 新問題研究 要件事実』法曹会 司法研修所
要件事実といえばこれ!という本。薄く基本的な考えがわかるのでまずはこれを読むべし。
弱点というか難点は、事例が簡易的過ぎて要件事実と主要事実の区別がよくわからない感じがする…くらい?あと類型が少ない。とはいえ、入門書としてはこれを読むべき。司法研修所でも配布されている要件事実の公式マニュアルなので、ここに書いてあることは司法試験合格後に必要な水準の最低水準といえる。
②『4訂 紛争類型別要件事実ー民事訴訟における攻撃防御の構造』法曹会 司法研修所
73期くらいから?復活して使用されている研修所の公式テキスト。前の版の時から使いにくさに定評があったが、それは変わらず…
この本は授業を聞いた後のまとめノート的な意味合いがつよく、これだけで文章の行間を読むのはかなりしんどい。もっとも、各訴訟類型のブロックダイアグラムは非常に良くまとまっている。それをみて、要件事実の整理理由や具体的な記載例が浮かぶか?を確認すると非常に良い。第4訂になって、類型が増えて、③と同じレベルの内容は入っているんじゃないかといえる。
③『完全講義 民事裁判実務の基礎〔第3版〕(上巻)』民事法研究会 大島眞一著
神の本。これで司法試験・予備試験における要件事実は、十分対策できる。これを10回読めばもう大丈夫!ってくらいの内容です。受験生はみんな使っている。
要件事実関連は①②のような司法研修所の本がメインにはなります。しかし、研修所の書籍は要件事実の整理理由が舌足らずな部分が多いためその点がわかりにくい。一方で、本書はしっかりと整理理由も書いてありわかりやすい。一般的な要件事実の説明や民事訴訟法との関係等も説明があり、民法・民事訴訟法・実務基礎のトリニティがよくわかる一冊。要件事実の記載しかないが、続刊(過去は下巻であったが発展と合流した結果こうなったらしい)+過去問解説の3冊でOKそれだけ買いましょう。
④『10訂民事判決起案の手引き(補訂版)』法曹会 司法研修所
判決起案のための手引書。形式的な書き方や注意事項などは研修所で使用する(判決をフル起案しない限りそこまで参照はしない?かも)ものである。要件事実という感じには読めないと思うが、この本の後半は、事実適示記載例集になっており、実際に要件事実を摘示するときにどのくらい書くのか?が例示されており非常によい。この水準くらいが書ければ予備試験的にも問題ないと思う。
※抽象的な要件事実は暗記でも対応できるが、実際に事実を摘示する(訴状や準備書面で書くように事実を示す)時のやり方は慣れるしかないと思う。その点ではまとまっている本書は非常に良いと思う。試験的にもロー入学時からずっと使っていた。
⑵ 事実認定
①『改訂 事例で考える民事実認定』法曹会 司法研修所
たしか自分が法科大学院の11月ごろに発表された、研修所の事実認定起案の手引書。これに従って司法修習の起案(実際の事件記録に基づいて事実認定をさせるもの問題研究起案とか集合起案とかいう)することになる。予備試験の段階で求められるレベルとしては、本書の記載までは必要ないかもしれない。本書では事実認定の類型や考え方だけでなく、要件事実を整理する(争点整理)の意味もわかるので非常によい。これは読むべし。
②『ステップアップ民事実認定(第2版)』有斐閣 村上八尾ほか著
民事事実認定も実務家向けの本は非常に多くあるし、非常に面白いものが多い。しかし、試験的にも使える概説書的なものはすくない。そうした中で本書は基本的な言葉十分にまとまっているのでよい。単純に読み物としても面白い。
③『続 完全講義 民事裁判実務の基礎─要件事実・事実認定・演習問題─』民事法研究会 大島眞一著
上巻でも書いたけど、これでもう民事実務はOKという感じ。内容は発展的な要件事実と事実認定の基礎+演習という感じ。
この本の神髄は、修習の時に行うサマリー起案(判決書の重要な一部を検討するもの)を書くときに参考例として見れるのでよい。
⑶ 執行保全・民事手続き関係等
①『民事訴訟第一審の解説ー事件記録に基づいて(第4版)』法曹会 司法研修所
民事訴訟法では民事裁判の通常の手続きの外観をしっかり説明する場面はないので、逆にこうした教材を利用することが民事訴訟法の理解にもつながる。
※民事訴訟法ではいわゆる論点が生じる点についての解説が中心であり、論点が生じない通常の処理がないがしろになっている。通常の手続き上の処理を理解したうえで、異常事態にどう対処するか?という視点があると理解が捗る。
②『基礎からわかる民事執行法・民事保全法(第3版)』商事法務 和田吉弘著
執行保全に関してはそこまで大きな論点がでないので、実際この本でもオーバースペックな気もするが、それでもよく使われているので紹介。個人的には薄いせいで逆に情報量が少なくわかりにくいという印象。かといってこれ以上詳細な書籍を頼るのは予備試験的にはあきらかにオーバースペックなのでむずかしい…
※個人的には実務家向けのこの本がすごいおすすめ。冒頭10ページくらいでも読んでみるとなんじゃ?って感じで読み進めると思う。
2 体系書(というよりもより詳細な本)
①『要件事実マニュアル1(第6版)』『要件事実マニュアル2(第6版)』ぎょうせい 岡口基一著
岡口先生といえばこれ。司法試験的にも民法のあたりはサブノート的に使えそうと思ったが、いやそこまでしなくとも…とも思う。実務的にもとりあえず見てより詳細に文献を探す際の指針にするのでまぁ使ってもいいかなと思う。。けど、予備試験や司法試験を考えれば不要。ここまではやる必要はない。もし、アクセスできる環境にあれば利用してほしいくらいなイメージ。
②『要件事実の考え方と実務(第4版)』民亊法研究会 加藤新太郎著
一時、加藤新太郎先生の本をなんとなく読んでいた時に読んだ本。局所局所いいと思う部分やわかりやすい箇所はあったがすごい!という感じはあんまりしなかった(事実認定の方と一緒に読んだ感じ)。司法書士の簡易裁判所の代理権付与の認定の際に使われていた資料を基にしたらしい?
3 演習書
①『要件事実論30講(第4版)』弘文堂 村田・山野目編
要件事実の体系書的な本。一応問題集的な扱いなのでこちらで紹介しているが、ほぼ体系書。著者も基本的には研修所関係者であるから、実質的には研修所本の延長という感じ。実際に研修所の講義でも参照されるのでガチ任官志望の人とかは持っていてもいいと思う。
②『要件事実問題集(第5版)』商事法務 岡口基一著
かなり難易度高めなので司法試験や予備試験では不要。一応問題集として有名なので紹介しているが、買ってまでやる必要はない。自分も修習前の暇なときに使用したくらい。
③『完全講義 法律実務基礎科目[民事]〔第2版〕─司法試験予備試験過去問 解説・参考答案─ (完全講義シリーズ)』民事法研究会 大島眞一著
完全にチート級の解説書。予備試験の過去問を現役の裁判官が、しかも基本書的な本を書いている人が解説しちゃいかんでしょ笑最初に見た時は見間違えと思った。事実認定問題も裁判官的にはこのくらいを求めている?という部分もわかるので絶対に買うべき。
4 判例集
※試験的には間違いなく不要。むしろ民法と民事訴訟法の判例をしっかりやるべし。
①『民事事実認定重要判決50選』立花書房 岡田・難波編
刑事の方は参照することも多かったが、、民事はたぶんここまで不要。こんながっつりの事実認定は現在の設問形式ではおよそでないので不要。
②『〈判例から学ぶ〉民事事実認定』有斐閣 伊藤・加藤編
古いけど、このくらいまとまっている本の方が読みやすい。けど試験ではほぼ使わない。修習の時にちょっと勉強で読んだだけ。
5 そのほか
①『完全講義 民事裁判実務[基礎編]─要件事実・事実認定・民事保全・執行─ (完全講義シリーズ)』民事法研究会
大島眞一著
大島先生が予備試験向けにまとめてくれたテキスト。過去問編とあわせてこちらでもOK。執行保全なども書いてあるのでこれ一冊でも対応可能。上巻とどちらがよいかは好み次第かなぁと。口述対策では続編を買う必要はありそう。
②『司法試験予備試験 法律実務基礎科目ハンドブック1 民事実務基礎〔第5版〕 』辰巳法律研究所
予備校の本でまとまっているものがこれしかないという感じ。試験に必要なものが掲載されているが、レジュメ的なもので読みにくさを感じる。過去問の解説と答案例もあり、これ一冊でも行けるっちゃいけそうだが。
③『要件事実入門初級編(第3版)』『要件事実入門紛争類型別(第3版)』 創耕社 岡口基一著
要件事実マニュアルの岡口判事の初級向けの本。初級編に予備試験実務基礎科目の解説、紛争類型別編に司法試験民法の要件事実的な解説が入っており参考になる。要件事実的に試験問題を見るとどうなるのか?という点で参考になるが、そこまで買う必要はないと思う。紛争類型別編は紛争類型別と対応して使用するものありかなと思うが…
※法曹倫理は以下の本がおすすめ
日本弁護士連合会:解説「弁護士職務基本規程」第3版
解説「弁護士職務基本規程」第3版
おそらく市販の本屋さんでは販売されていないはず。弁護士会館や裁判所等では買えるかもしれないが、基本的には郵送で購入するか、メルカリで買ってもよいと思う。法科大学院の授業で買う時もあるかもしれない。なお、弁護士登録するともらえる。
弁護士職務基本規程は弁護士会が制定しているので、制定者の解説ということでまぁこれを理解していれば解答筋として間違えることはないと思う。
試験的には規程そのものを探せるレベルで見ておけば大体OKとも思うが、解説が欲しいと思う方はこの本がおすすめ。まぁ仕事になってからも怖くなったら使うしね。
第4 さいごに
以上です。色々紹介しましたが、大島先生の本一択です。過去は研修所系の本で受かっている方もいましたが、予備校の講義がない(あっても本の方がこの分野はよいと思うが)場合にはもう大島本で!
コメント