第1 はじめに
私が受験時代に使用していた本や読んだ本,現在指導に際して確認するために使用している本をまとめていこうと思います。利用方法なども一言二言で書いていきますので参考にしてください。また,同じ名称の本も多いので,通称なども使用していきます。
なお,すべてを私が購入し通読していたわけではなく,図書館で参照していたものも結構記載しております。
特にこれは,というものは別途書評にします。本の分類基準は別途まとめ記事参照。
なお,引用しているものは最新版をに統一している予定です。私が受験当時に使用していた版とは異なります。
第2 憲法の書籍の外観
憲法は、司法試験予備試験の問題と基礎知識といわれる部分の距離が比較的遠い科目です。また、教科書に書いてある知識をそのまま答案に書くことの少ない科目です。ですが、教科書で考え方を学んでおかないと体系が崩れます。
憲法の書籍状況の特徴は、教科書や判例集も豊富にありますが、一番の特徴は副読本の多さにあります。有用な本もたくさんありますが、逆にやりすぎてもコスパがよくないです。
ここの紹介を参考にしつつ、自信で本屋で手に取って検討してみてください。
第3 書籍紹介
1 基本書・教科書
①『憲法(第8版)』岩波書店 芦部信喜著・高橋和之補訂 通称『芦部憲法』
芦部に始まり芦部に終わる。行間を読むテキストといわれますが,最低限度のことがコンパクトに書いておりいまでも普通に使える教科書です。というか,採点官もこれで勉強していたと考えると受験憲法における共通言語ではないかと思います。最近は使わない人もいますが,聖書ですので一度は読んでほしいです。
②『憲法学読本(第3版)』有斐閣 安西ほか著
私が受験時代には使っていませんでしたが,最近指導の際に推奨しています。読みやすし,統治も記述があるので1冊で憲法をと思う人にはお勧め。
③『立憲主義と日本国憲法(第5版)』有斐閣 高橋和之著
芦部憲法の補訂をしている高橋先生の基本書。審査基準論の理解が進む一冊でした。割と芦部憲法でわからない部分や不足している部分の補充として使用していました。
④『憲法1 人権(第8版)』『憲法2 統治(第8版)』有斐閣アルマ 赤坂・渋谷著
学部の教科書的な本ですが,人権の関係性などの図表がまとまっていてよかった。知識の整理にはちょうどよい本です。統治もコンパクトで非常にわかりやすかった。これくらいの知識量で充分と思う。
⑤『憲法Ⅰー総論・統治(第2版)』『憲法Ⅱー人権(第2版)』日本評論社(日評ベーシックシリーズ)
最近買って読んだ本です。
教科書として申し分ない内容です。司法試験・予備試験的に効率的に知識を習得できるものです。具体例が非常によく、条文が想定している具体例がよくわかります。最近の時流に即している感じがする。判例の紹介が少ないですが、全体としてページ数が少ないので判例は判例集でフォローする感じです。
最近、憲法の基本書で迷ったら、この本を推奨しています。
2 体系書
①『日本国憲法論(第2版)』有斐閣 佐藤幸治著
法科大学院を作った戦犯?(らしい???)だが,表現の自由やプライバシーの自己情報コントロール権説などはわかりやすいですし,統治の内容もここまで書いてあれば申し分ない。体系書といえばこれ!という一冊に思う。法科大学院制度を作った点はギルティですが。
②『憲法Ⅰ基本権 第2版』『憲法Ⅱ総論・機構』日本評論社 宍戸他著
いわゆる新4人本。旧4人本とは内容が全然違うが,最近のトレンド的にこちらなのか?と思い、受験指導で辞書として使用しています。内容的には可もなく不可もなしという感じです。三段階審査で書かれた教科書という触れ込みですが,現在の司法試験で三段階審査の枠組みで書くのは厳しいので、必ず読み込む必要はないと思う。もっとも、三段階審査での分析とかではなく、純粋に判例の分析や読み方はわかりやすいので普通に読み進められると思います。
※旧4人本はさすがに古いので以下紹介にとどめる。昔はこれを使っていた方も結構いたようです?私はあまり使用していなかったですが。
3 演習書
①『判例から考える憲法』法学書院 小山他著
事例の内容がちょうどよく,解説も丁寧でわかりやすくなり非常に使い勝手がよかった。やや古い本ですので、現在で必須の本ではないでしょう。たしか受験新報の連載です。図書館とかで読めるなら読んでみるといい本
②『憲法起案演習』弘文堂 渋谷秀樹著
アルマを書いている渋谷先生の司法試験過去問の解析本。学者の司法試験問題の解析本としては,これしかないかなと思う(よく考えたら後述の『憲法ガール』の著者の大島先生がもはや学者か?)。内容は30ページくらいまでの総論部分だけは非常によい。判例のまとまりや答案作成の際の視点になる。
しかし,本題のはずの問題の検討部分となる各論は、、、まぁひかえめにいって読む価値は極めて乏しい。。。参考答案も合格のための参考にはならないし,現場でここまで分析できるか?としかいえなもの。およそ受験生をターゲットとしているようにも思えない記述も多く、意図が不明な本という印象。学者が書いてみた司法試験答案という感じか。というか,この分野だと『憲法ガール』が強すぎるためわざわざ読まなくとも。。。総論部分の表はよいが,ならアルマにも同様の表はあるのでそっちの方が情報量が多くてよいと思う。
※ネタとして以下の授業が面白いのでURL貼ります
http://syllabus-law.chuo-u.ac.jp/lawschool/detail/?action_ret=freeword-result&search=search&free_word=%E6%86%B2%E6%B3%95&id=6
③『憲法演習サブノート210問』弘文堂 宍戸・曽我部編著
サブノートシリーズの一冊。民法と刑法がよかったので買ってみたが、他に比べて疑問符??の着く問題が多い。メリハリをつけて読めばまぁ読み物としては面白い??一行問題とかおふざけですよね?はしがきと内容の不一致があるから錯誤では??9条の問題とか国際法ですよね??どこに向けて書いているのか…わからない問題もある程度ありますが,良問も多いので本当にメリハリが重要な本だと思う。ある種ネタですね。
④『憲法ガールRemake Edition』『憲法ガールⅡ』法律文化社 大島義則著
憲法の過去問解説の究極。問題を小説形式で解説するという独特の内容。絵もいいですし,読みやすい。分析のレベルは受験レベルとしては最高峰なので個々に書いてあることの半分くらいが本番で書けるように勉強すれば問題ないと思う。個別指導の方には必ず購入してもらっている書籍です。
4 判例集
①『憲法判例百選Ⅰ(第7版)』『憲法判例百選Ⅱ(第7版)』有斐閣 長谷部,石川・宍戸編
定番の1冊(2分冊ですが)。
本書に掲載されている判例はある意味司法試験の出題範囲です。短答の問題などは本書の判例の掲載部分から出題されている部分も多いです(逆にこれに乗っていない判例や判例の判旨・少数意見等を聞いてくる問題は難易度が高めといえます)。ですので本書の掲載判例は、論文・短答を通して試験で出ても文句は言えないもです。しっかり読むべし!
百選の使い方は別途記事にしますが、論文試験でも使える記述も多いです。事案と判旨だけでなく、解説も試験的に友好的なものが多く、判例集で悩んでいるなら間違いなく、百選を使用すべきです。統治の判例も必要箇所は読んでおいて損はないです。
②『精読憲法判例[人権編]』『精読憲法判例[統治編]』弘文堂 片桐他編
ロースクールの授業の指定教材としてよく使われている書籍。受講生にすすめられて、読んでみたら非常に良かったので百選と並んで推奨しています。憲法の人権部分の判例は、実際の判決文だと長文で読みにくいです。この本なら下線部が書いてあったりと視覚的にメリハリをつけて読める上に,法理論がどういうものか?事案がどうだったのか?を理解できるように作られておりわかりやすいです。
判例の原文や調査官解説を読むならこちらを読んだ方が効率的かなと思う。そもそも調査官解説等は編集がないと試験と関係ない部分も多いし、紙で読もうとすると印刷が大変なので、、、
なお、統治は司法試験・予備試験的には本書を利用するまで学習する必要ないと思う(内容的にオーバーすぎる)が、一応お勧めしておきます。ロッキード事件とか一票の格差等の選挙権関係とかの判例は一度じっくり読むと憲法全体の考えがわかるから個人的にはおススメではあるが…統治は択一がメインだし、条文が大事なのでやっぱり過剰かな…
ほかのテキストでコンパクトに理解するのでもいいですが。。
③『憲法の地図』法律文化社 大島義則著
憲法人権判例の位置付けを条文ごとに図表を使いながら整理してくれている一冊。判例相互間の関係から、憲法の人権の体系が見えてくるため非常に良い本です。分量も薄く、ある程度判例を読んでいればすぐに読めるので最後の仕上げにちょうど良い。私の受験直前の4月に出ましたが、GW前にくらいに半日かけて読んで総復習した記憶があります。今でもちょうどよいですし、これをベースに書き加える等したら今でも現役で使えます!
5 そのほか
①『「憲法上の権利」の作法(第3版)』尚学社 小山剛著
私が三段階審査と出会った1冊。違憲審査基準での理解がどうも進んでいなかった時期(大学1年の春休み)に読んだ本。違憲審査基準論以外でも判例や条文の整理できるんだな~と思い,逆に違憲審査基準論の理解が進みました。判例の分析なども秀逸です。この本を読んで薬事法判決の話や、制度に依拠する憲法上の権利などの存在を知りえたのでよかったです。今でも読んで司法試験・予備試験の学習に損はない本だと思います。
②『憲法 解釈論の応用と展開(第2版)』日本評論社 宍戸常寿著
私としては,憲法の理解が格段に進んだ1冊です。本書は、一見簡単そうに見えて難解であるので司法試験的に活用するのは難しいです。しかし,内容は非常に濃いため、じっくり考えたら憲法の理解が深まると思います。憲法の人権の考え方がみにつくおすすめの1冊。最後に答案作成方法にも言及がありそこを先に読んでから本文を見てもいいかと思います。
③『憲法の急所──権利論を組み立てる(第2版)』羽鳥書店 木村草太著
私が受験生時代にすごく流行っていた演習書です。一応,私も受験時代に読みましたが、独特な視点が多いように感じ,私自身は深くやりこめなかった一冊。審査基準の内容等を考えるのはよいと思う。
④『憲法判例の射程(第2版)』弘文堂 横大道聡編
最近よく使っている人を見かけるので一応持っている一冊。まだ完全に読めてないので評価はできませんが、、流行っているのでよいのだろうという推定が働く。
⑥『憲法論点教室(第2版)』日本評論社 曾我部他著
最近買って読んでみてよかった一冊。ここどうやって理解するんだろう?っていう意論点について一定の道筋が書いてあり理解が深まる1冊。
⑥『LAW IN CONTEXT 憲法 – 法律問題を読み解く35の事例』有斐閣 松井茂記著
自分が学部2年の時の演習で使った本。ゼミの先生は確か新任の准教授で単位が取りやすいのかわからなかったため,あまり受講生がいない授業でした。そんなタイミングの学生に,これを使用して憲法問題を検討させるというかなりの無理ゲーなゼミでした(笑)。しかし,この本の内容とあいまって,人権の設定とか新規の憲法問題に対してどう対処していくのか?判例と新しい問題はどう関係し,どのように処理していくべきか?などを学べた思い出の1冊。さすがにもう古いので試験に使用するのはちょっと厳しいかも。
⑦『読み解く合格思考 憲法 改訂版』辰巳法律研究所
憲法の答案の書き方がわからない!という方はとりあえず手に取ってよんでみるといい1冊。まず入り口としては非常によい。コンパクトだし。記述にやや不安な部分も個人的にあるが,他の書籍と併用したり,過去問を分析すれば問題ないと思うので,買う価値あり。
※憲法は副読本の種類が多いので適宜必要なものを1冊くらい読んでおくとよい。
第4 さいごに
以上です!憲法はほかにも色々ありますが、個人的に見たことあるのはだいたいこんな感じです。
2023年4月
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